スタッフはどこへ消えた?
20年ほど前、「チーズはどこへ消えた?」(スペンサー・ジョンソン著)という本がベストセラーになりました。
大量のチーズを見つけたネズミたち。
最初は大喜びですが、段々とその生活に慣れていきます。
しばらくしたある日、あるはずのチーズが突然消えて、大慌てになります。
歯科の求人は超売り手市場
最近の歯科医院の悩み事は求人です。
「求人をかけても全然こない」
どの医院に行っても、こう言われます。
少し前までは「衛生士は来ないけど、助手ならすぐ来る」と言っていましたが、今はその助手の採用もままなりません。
まさに「スタッフはどこへ消えた?」です。
理由としては、少子高齢化の影響があります。
10年前と比べると、20代の人口が1割ほど減っています。
そして、求人は大きな企業に集まる傾向です。
大きな企業に人は流れて、小さな企業にはほとんど回りません。
歯科の求人も、メーカーやディーラーなど、規模の大きな会社に集まります。
次に、総合病院や分院展開をしている大きな歯科医院です。
個人の歯科医院に応募するのは、その後になります。
そのため、今の超売り手市場だと、どうしても希望の人材が見つからないのです。
昔から景気がよくなると求人が悪くなり、逆に景気が悪いと求人が良くなりました。
「いつか景気が悪くなれば、求人が楽になるかも」という考えでは、ひたすらチーズを待つネズミと同じです。
日曜診療の見直し
求人が悪い今の時代には、違うやり方を考えます。
日曜診療をしている医院は、これを機会に変更してみてはどうでしょうか?
患者さんにとって、日曜診療はありがたいのですが、スタッフにとっては良い条件とは言えません。
求職活動をしている人は、複数の医院で面接を受けています。
採用される人は、他の医院でも採用されやすいです。
そのため、日曜診療をしている医院は、条件が悪くなり、辞退されることが多いのです。
上場大手の飲食店チェーンでも、スタッフが確保できないことを理由に、深夜営業を辞めたことがありました。
日曜診療を見直すことも考えてみましょう。
採用年齢を上げる
40代や50代のスタッフの採用を検討します。
採用年齢も、今までは20代が多かったと思います。
しかし、超高齢化社会は、そこまできています。
患者さんがお年寄りばかりになるのも、当たり前になります。
昔は、マクドナルドやファミリーレストランも、若いスタッフが基本でした。
それがいつの間にか、主婦や年配のスタッフが多くなりました。
歯科も、高齢のスタッフが当たり前の時代になる可能性があります。
長く働ける環境づくり
また、現在勤務しているスタッフが少しでも長く働ける環境を整えていきます。
結婚して出産しても戻ってきやすい制度を設けたり、パートでも働きやすい時間に調整したりします。
福利厚生で社員旅行もいいのですが、主婦の方が参加しやすいよう、ランチ会にしたり、子供も連れていける日帰り旅行にしたりと、イベントの内容も変えていきます。
こうして、少しでもいいスタッフを確保して、長く働いてもらえるようにするのが、院長の仕事です。
時代の変化に対し、経営をどう舵取りしていくのか、力量が問われるところです。
あの本の「チーズ」は成功の比喩でしたが、「スタッフ」に置き換えて、再び読んでみてはどうでしょう。
ヒントが見つかるかもしれません。
執筆:税理士 森川 敏行(プロフィール)